遺留分を有する推定相続人であっても、家庭裁判所で「相続人廃除」が確定すれば、遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)はできません。
以下、法的に整理します。

1 相続人廃除とは
民法892条以下
被相続人に対する
- 虐待
- 重大な侮辱
- その他の著しい非行
があった場合に、家庭裁判所の審判により相続人資格を失わせる制度です。
※遺言による廃除も可能ですが、最終的には家庭裁判所の審判が必要です。
2 廃除の効果
廃除が確定すると、その者は
- 相続人ではなくなる
- 代襲相続の原因となる(※子がいれば代襲)
という効果が生じます。
重要なのは、
👉 「最初から相続人でなかった」ものとして扱われる
という点です。
3 遺留分との関係
民法1042条以下
遺留分は「相続人」にのみ認められる権利です。
したがって、
✔ 廃除確定 → 相続人資格喪失
✔ 相続人でない → 遺留分権利者ではない
という論理になります。
4 結論
| 状態 | 遺留分侵害額請求 |
|---|---|
| 廃除前(まだ確定していない) | 可能 |
| 廃除確定後 | 不可 |
つまり、
廃除された者は遺留分侵害額請求(旧:減殺請求)はできません。
5 実務上の注意点
① 廃除が確定しているか確認
審判確定前であれば遺留分問題は残ります。
② 代襲相続人の存在確認
廃除者に子がいれば、
その子に遺留分が発生する可能性があります。
③ 遺言作成時の設計
単なる「相続させない」では足りません。
遺留分対策が必要になります。
排除はなかなか裁判所では認められないかどうかについて
結論から申し上げます。

相続人廃除は、実務上「かなりハードルが高い制度」です。
家庭裁判所で認められる件数は多くありません。
法的根拠
民法892条
被相続人に対する虐待・重大な侮辱・その他の著しい非行
が要件です。
ここで重要なのは
「著しい」という強い程度要件です。
なぜ認められにくいのか
① 単なる不仲では足りない
- 長年音信不通
- 親子関係が冷え切っている
- 面倒を見ない
→ 原則として廃除理由にはなりません。
家庭裁判所は
「感情的対立」と「法的排除」を厳格に区別します。
② 客観的証拠が必須
口頭主張ではほぼ通りません。
例:
- 診断書
- 暴行の刑事記録
- 金銭横領の証拠
- 継続的な暴言の録音
立証責任は申立人側です。
③ 親子関係断絶だけでは弱い
音信不通のみでは通常認められません。
扶養放棄も、事情次第では足りないと判断されます。
実務で比較的認められやすいケース
- 継続的暴力(DVレベル)
- 財産の横領・多額使い込み
- 被相続人に重大な精神的苦痛を与える行為
- 刑事事件レベルの犯罪行為
相続欠格との比較
民法891条
相続欠格は
- 殺害
- 遺言書偽造
- 詐欺・強迫による遺言取消
など限定的ですが、該当すれば当然に失格。
一方、廃除は裁判所の裁量判断です。
実務的結論
✔ 廃除は「最後の手段」
✔ 単なる不仲対策には向かない
✔ 遺言+遺留分対策の方が現実的
裁判例傾向はどうか
廃除についての裁判例の傾向を整理します。
以下は現在確認できる主要な判例ポイントです。

1|認められた事例(廃除の成立)
典型的には、相続人の行為が被相続人の権利・生活を著しく侵害したと認められたケースです。裁判所は、具体的な被害・程度の証拠を重視します。
- 無断で高額預貯金を引き出し消費・浪費した事案(和歌山家裁)
- 窃盗や服役歴があり、被害者側の負担まで被相続人に強いた事案(京都家裁)
- 長期入院中の面倒を全く見ず、離縁訴訟まで迫った事案(東京高裁)
- 被相続人に継続的な暴力を加え重大な傷害を負わせた事案(大阪高裁)
傾向
✔ 客観的な証拠(診断書等)で「著しい非行・虐待」が裏付けられると認定されやすい
✔ 民法892条の要件(被相続人に著しい非行等)を厳格に評価される傾向
2|否定された事例(廃除原因不成立)
裁判所は「単なる不和・不仲」や「一時的行為」は廃除事由に該当しないとしています。具体例として以下があります。
- 相続人が業務上の横領で服役した事案 → 「著しい非行」とは評価されず
- 嫁姑関係の不和や疎遠な関係 → 被相続人側にも責任や事情ありとして否定
- 被相続人と離婚調停等で関係が断絶したような事案 → 広義の『非行』とは認められない
傾向
🔹 行為の社会的評価(犯罪かどうか)がポイントではなく、
被相続人との関係破壊の程度が審査される
🔹 単なる「親子不仲」や「疎遠」だけでは認定困難
3|事例に見る裁判官の評価基準
裁判例を俯瞰すると、判断のポイントは次のように整理できます:
✔ 被相続人に対する精神的・身体的被害の「深刻性」
単発ではなく、継続的な行為で被害が強いほど認定されやすい。
✔ 客観的証拠の有無
刑事記録、診断書、第三者証言等。主観だけでは不十分。
✔ 被相続人の側の事情・関与
被相続人の方にも問題がありうる場合、裁判所は慎重な判断をします(不仲の双方向性等)。
4|実務上の裁判例傾向まとめ
| 判定結果 | 事案の印象 |
|---|---|
| 認められる | 重大な暴力・浪費・被害が明確、客観証拠多数 |
| 否定される | 不和・疎遠のみ、非行の証拠不十分 |
実務感としては、廃除は裁判所で認められるケースが限定的であり、証拠保全・立証設計が極めて重要です。
相続や遺言に関して何かお困りごと有りましたらお気軽にご相談ください。

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