認知症の方(判断能力が不十分な相続人)がいる場合の遺産分割は、通常のケースと大きく取扱いが異なります。実務上のポイントを体系的に整理します。

結論の要点(最重要)
- 認知症で判断能力がない相続人がいると、遺産分割協議はそのままでは無効
- 原則として 成年後見人等を選任したうえで遺産分割 を行う必要があります



1.なぜそのまま遺産分割できないのか
遺産分割協議は法律行為です。
相続人の中に、
- 認知症
- 知的障害
- 重度の精神疾患
などにより意思能力がない方がいる場合、その方が署名・押印しても法律上は無効になります。
👉 後日、
「協議は無効だ」「やり直せ」
と主張され、相続登記や預金解約が全て止まるリスクがあります。
2.原則的な対応:成年後見人の選任
(1)家庭裁判所へ申立て
判断能力がない相続人について、
**成年後見人(または保佐人・補助人)**を選任します。
申立先は 家庭裁判所 です。
(2)後見人が遺産分割に参加
後見人が本人の代理人として、
- 遺産分割協議書に署名押印
- 本人の利益を害しない内容かを厳格に判断
します。
3.遺産分割内容の注意点(実務で非常に重要)
❌ よくあるNG例
- 「本人には何も相続させない」
- 「法定相続分より著しく少ない」
- 「他の相続人が全て取得」
👉 後見人は同意しません
👉 家庭裁判所も事実上認めません
⭕ 原則的な考え方
- 法定相続分ベース
- 少なくとも本人の生活・財産維持に不利益でない配分
※ 不動産を本人単独取得 → 管理不能
→ **換価分割(売却して現金分割)**が選ばれることも多いです。
4.遺言書がある場合はどうなる?
遺言が有効な場合
- 原則、遺産分割協議は不要
- 後見人選任をせずに相続手続き可能なことも多い
👉 生前対策として 遺言書の重要性が極めて高い
※ ただし
- 遺言内容が不明確
- 遺留分侵害がある
場合は別途対応が必要です。
5.成年後見を使うデメリット(必ず説明すべき点)
実務では、ここを説明せずにトラブルになる例が多いです。
- 原則 本人死亡まで後見が継続
- 毎年の裁判所報告義務
- 専門職後見人の場合、報酬が継続発生
👉 相続だけのために後見を使うと
長期的な負担が大きくなる点は要注意です。
6.実務上の整理(行政書士視点)
遺産分割前に必ず確認すべき事項:
- 医師の診断書(意思能力の有無)
- 相続財産の内容(不動産・預金)
- 遺言書の有無
- 成年後見が本当に必要か
- 他に使える制度がないか
まとめ
- 認知症の相続人がいる場合、遺産分割は原則ストップ
- 成年後見人を選任して適法に進める必要あり
- 内容は「本人保護」が最優先
- 事前の遺言があれば大幅に簡略化可能
何かお困りごと有ればどうぞお気軽にご相談ください。

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