相続が発生した際、相続人であるにもかかわらず、ほかの人から相続人として認められなかったり、本来取得できるはずの相続財産を取得できなかったりすることがあります。
このような場合に問題となるのが、相続回復請求権です。
相続人の権利を守るために設けられた制度ですが、請求できる期間には制限があるため、注意が必要です。
今回は、相続回復請求権の意味や具体例、時効、相続トラブルへの対応について、行政書士の立場から解説します。

1.相続回復請求権とは?
相続回復請求権とは、本来相続する権利を持っている人が、その権利を侵害された場合に、侵害している相手に対して相続権の回復を求める権利です。
民法第884条に規定されています。
本来の相続人を「真正相続人」、相続人であるかのような立場で相続財産を取得・管理している人を「表見相続人」と呼ぶことがあります。
例えば、次のようなケースが考えられます。
– 本来相続人となる子どもが、ほかの親族によって相続人から除外されてしまった。
– 相続人の一人が、ほかの相続人の権利を否定して、相続財産を独占している。
– 相続人でない人が、相続人であるかのように振る舞い、相続財産を取得している。
ただし、相続人同士の財産争いがすべて相続回復請求権に該当するわけではありません。具体的な事情によって、遺産分割請求や所有権に基づく請求など、適切な法的手段が異なります。
2.相続回復請求権の具体例
事例1:相続人である子どもが相続から除外された場合
父親が亡くなり、子どもが2人いたとします。
ところが、長男が次男の存在を隠し、自分だけが相続人であるかのように手続きを進めて、預貯金や不動産を取得してしまいました。
次男は本来、相続人として相続権を有しているため、事情によっては、相続回復請求などによって権利の回復を求めることが考えられます。
ただし、次男が相続人であることを確認できる戸籍謄本や、財産の名義・管理状況などを調査し、どのような請求が適切かを判断する必要があります。
事例2:共同相続人の一人が相続財産を独占している場合
母親が亡くなり、長男と長女が相続人となったものの、長男が遺産である不動産を自分だけのものだと主張し、長女の権利を認めないケースです。
この場合、長女は自分の相続権や持分を主張することが考えられます。
ただし、共同相続人間の争いについては、相続回復請求権の消滅時効が適用されるかどうかに関して、最高裁判所の判例による重要な判断基準があります。
単に他の相続人が遺産を管理しているというだけで、直ちに相続回復請求権の問題になるわけではありません。
3.相続回復請求権の時効は5年と20年
相続回復請求権について、民法第884条は次の2つの期間を定めています。
① 相続権を侵害された事実を知った時から5年
相続人またはその法定代理人が、相続権を侵害された事実を知った時から5年間、相続回復請求権を行使しない場合、時効によって消滅します。
② 相続開始の時から20年
相続開始の時から20年を経過した場合も、同様に時効によって消滅します。
ここで重要なのは、5年の期間は、単に被相続人が亡くなったことを知った時から始まるわけではないという点です。相続権を侵害された事実を知った時が問題となります。
また、個別の事案では、時効の起算点や時効の援用が認められるかなどについて、法的な検討が必要になることがあります。
4.共同相続人の間でも時効が適用されるのか?
相続回復請求権については、共同相続人同士の争いにも民法第884条が適用される場合があります。
しかし、最高裁判所昭和53年12月20日大法廷判決は、相続財産を独占している共同相続人が、他の相続人の権利を侵害していることを知っていた場合などには、相続回復請求権の消滅時効を援用できないことがあると判断しています。
例えば、長男が次男にも相続権があることを知りながら、次男の持分まで自分のものとして扱っていた場合です。
このようなケースでは、長男が民法第884条の時効を主張できるとは限りません。
さらに、最高裁判所令和6年3月19日判決では、相続回復請求権の消滅時効と、所有権の取得時効は別個の制度であることなどが問題となりました。
したがって、相続開始から長い年月が経過しているからといって、必ず権利が失われるとも、必ず取り戻せるとも限りません。
5.相続回復請求を検討する場合に確認したいこと
相続権を侵害された可能性がある場合には、次の事項を確認することが重要です。
– 相続人の範囲:戸籍謄本などで、誰が法定相続人となるのかを確認する。
– 相続財産の内容:預貯金、不動産、有価証券など、どの財産が問題となっているかを調べる。
– 権利侵害の状況:誰が、どのような根拠で財産を取得・管理しているのかを確認する。
– 期間の確認:相続開始時期と、相続権を侵害された事実を知った時期を整理する。
– 適切な請求方法の検討:相続回復請求、遺産分割、登記の抹消・更正など、事案に応じた対応を検討する。
特に、不動産の名義が変更されている場合や、相続財産が第三者に譲渡されている場合には、早めに専門家へ相談することが大切です。
6.行政書士辻澤孝文事務所に相談できること
相続回復請求権が問題となるケースでは、相続関係の調査や必要書類の収集、相続財産の確認など、事実関係を整理することが重要です。
行政書士は、業務の範囲内で、戸籍謄本等による相続関係の調査、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書などの書類作成を支援できます。
ただし、相続人間で法的な争いが生じている場合、相手方との交渉や訴訟手続などを行政書士が代理することはできません。そのような場合には、弁護士など適切な専門家への相談が必要です。
相続問題は、時間が経過するほど証拠の確認や財産の把握が難しくなることがあります。相続権を侵害された疑いがある場合は、早めに状況を整理することをおすすめします。
まとめ
相続回復請求権は、本来の相続人が相続権を侵害された場合に、その回復を求めるための重要な制度です。
民法第884条では、原則として、相続権を侵害された事実を知った時から5年、相続開始の時から20年という期間が定められています。
もっとも、共同相続人間の争いでは判例上の例外的な取扱いがあり、時効の適用や具体的な請求方法は個別の事情によって異なります。
「自分が相続人なのに遺産を取得できない」「ほかの相続人が財産を独占している」といったお悩みがある方は、まず相続関係と財産の状況を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。
行政書士辻澤孝文事務所では、相続に関する戸籍調査や相続関係書類の作成など、対応可能な範囲で相続手続きをサポートしております。
相続に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。

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