所在等不明共有者の持分が、地方裁判所の裁判によって他の共有者に取得された場合でも、所在等不明共有者の権利が完全に消滅するわけではありません。
1.持分そのものは失う
民法262条の2による「所在等不明共有者の持分の取得の裁判」が確定すると、その共有者の不動産に対する共有持分は、取得した共有者に移転します。したがって、元の所在等不明共有者は、その不動産について「共有者としての権利」を失います。
例えば、
- A:1/2
- B:1/2(所在等不明)
で、Aが裁判を申し立て、Bの1/2をAが取得した場合、
A=全部(1/1)
となります。
2.しかし、Bには「お金を請求する権利」が残る
ここ重要です。

民法262条の2第4項は、所在等不明共有者について、
取得された持分の「時価相当額」の支払いを請求できる
と定めています。
つまり、Bは不動産の持分そのものを失う代わりに、その持分の経済的価値に相当する金銭を受け取る権利を持つことになります。
例えば、土地全体の時価が2,000万円で、Bの持分が1/2なら、
Bの持分の時価相当額=約1,000万円
というイメージです。
3.実際には「供託金」が重要
裁判所は、持分取得の裁判をするにあたり、申立人に対して、所在等不明共有者のために裁判所が定めた金額を供託するよう命じます。
したがって、所在等不明だったBが後になって現れた場合、
「自分の共有持分を返してほしい」
ということは原則としてできません。
その代わり、
「自分の持分の時価相当額を支払ってほしい」
と請求することになります。
また、供託された金銭については、所在等不明共有者が還付を請求できます。国土交通省の資料でも、裁判の効力発生後、所在等不明共有者は供託金還付請求権を行使できると整理されています。
4.「所在が判明したら持分を取り戻せる」という制度ではない
ここは誤解しやすいところです。
Bが後から発見されても、
「私は帰ってきたので、土地の1/2を返してください」
とは原則として言えません。
すでに裁判によってBの持分がAに移転しているからです。
Bに残されている中心的な権利は、
「取得された持分の時価相当額の支払いを受ける権利」
です。
5.なお、「家庭裁判所」ではなく「地方裁判所」
所在等不明共有者の持分取得の裁判(民法262条の2)は、家庭裁判所ではなく、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。 大阪地方裁判所も、この手続を「地方裁判所」に申し立てる手続として案内しています。
したがって、相続した不動産についてこの制度を利用する場合には、
「相続人の一人が所在不明だから家庭裁判所で持分を移転する」
という理解ではなく、
「所在等不明共有者の持分取得の裁判を地方裁判所に申し立て、裁判により他の共有者がその持分を取得する」
という理解が正確です。
相続案件で特に注意する点
さらに、所在等不明共有者の持分が「共同相続人間で遺産分割をすべき相続財産」に属している場合、相続開始から10年を経過していないと、この持分取得の裁判はできません(民法262条の2第3項)。
この点は、重要です。
「所在不明=すぐ持分取得の裁判ができる」わけではなく、相続財産なのか、遺産分割が済んでいるのか、相続開始から10年経過しているのかを確認する必要があります。
お困りの方は是非ご相談ください。

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