遺言書と異なる遺産分割協議は可能か
① 基本原則(大前提)
被相続人が有効な遺言を残している場合、
👉 遺産は原則として遺言どおりに承継する
これは民法の基本構造です。
- 遺言=被相続人の最終意思
- 相続開始時に当然に効力発生(民法985条)
したがって、
✅ 遺言内容と異なる分割は
当然にはできない
しかし実務では例外があります。
② 遺言と異なる遺産分割ができる場合(共通要件)
次の要件を満たせば可能です。
✔ 要件
- 相続人全員の合意
- 受遺者を含めた全員の同意
- 遺言で分割方法が絶対的に固定されていない
つまり
👉 利害関係人全員の処分行為として再分配する
という構造です。
③ 遺言執行者がいない場合
✅ 結論
相続人全員の合意があれば可能
理由
遺言執行者がいない場合、
- 遺言内容を実現する主体が存在しない
- 相続人が遺産管理主体となる
そのため、
✔ 相続人全員が
「遺言どおりにしない」
と合意すれば、
👉 新たな処分(遺産分割協議)として有効となりえます
実務処理
登記・金融機関では通常次を要求:
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の実印押印
- 印鑑証明書
※「遺言と異なる分割をする」旨を明記するのが安全。
④ 遺言執行者がいる場合
ここが重要論点です。
✅ 原則
遺言執行者の同意が必要
理由(民法1012条)
遺言執行者は
👉 遺言内容を実現する排他的権限
を持ちます。
つまり、
相続人は単独では
- 遺言内容を変更
- 遺産処分
できません。
✔ できる場合(実務結論)
次の全員が同意すれば可能。
必須メンバー
- 相続人全員
- 受遺者
- 遺言執行者
👉 全員合意により遺言を事実上変更。
✔ なぜ可能か
遺言を「無効にする」のではなく、
- 一旦遺言で権利取得
- その後に全員で再処分
という法律構成をとるため。
⑤ 重要な実務注意(超重要)
① 受遺者を忘れる事故
多いミス。
遺言で
- 「長男に全部相続させる」
- 「第三者へ遺贈」
がある場合、
👉 受遺者も当事者
です。
相続人だけでは無効。
② 遺言執行者無視は登記却下リスク
遺言執行者ありなのに
- 相続人だけの協議書
→ 法務局で補正・却下事例多数。
③ 「相続させる」遺言でも変更可能
最高裁実務では、
「相続させる」遺言でも
✔ 全員合意なら変更可能
と扱われています。
④ 遺言で禁止されている場合
遺言に
- 遺産分割禁止(最長5年)
- 処分制限
がある場合は要注意。
👉 原則変更不可。
⑥ 実務整理(一覧)
| 区分 | 遺言と異なる分割 |
|---|---|
| 遺言執行者なし | 相続人・受遺者全員合意で可能 |
| 遺言執行者あり | +遺言執行者の同意必要 |
| 一部欠ける | 不可 |
| 分割禁止遺言あり | 原則不可 |
⑦ 実務で最も安全な処理
次が推奨です。
- 遺言どおり一旦承継
- その後贈与・売買・共有解消
理由:
- 紛争予防
- 登記官対応が安定
- 金融機関対応が容易
相続でお悩みの方は是非ご相談ください。

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