一定の電子公告を行おうとする会社に課される「電子公告調査義務」について、制度趣旨から実務上のポイントまで整理して説明します。

1 電子公告制度の位置づけ
会社法において、会社が行う公告は、
①官報公告
②日刊新聞紙等公告
③電子公告
のいずれかの方法によることができます(会社法第939条)。
このうち電子公告とは、会社のウェブサイト等に公告事項を掲載する方法であり、コスト削減や迅速性の観点から利用が増えています。
しかし、電子公告は「インターネット上に正しく表示され、誰でも継続的に閲覧できること」が前提となるため、信頼性確保のための特別な制度が設けられています。その中核が電子公告調査制度です。
2 電子公告調査義務の法的根拠
電子公告を行う会社のうち、一定の公告をしようとする会社は、公告前後に電子公告調査を実施し、その結果を保存する義務を負います。
この義務は、
- 会社法第941条
- 会社法施行規則第222条以下
に規定されています。
3 「一定の電子公告」とは何か
電子公告調査義務が課されるのは、すべての電子公告ではありません。主に次のような、利害関係人への影響が大きい公告が対象です。
① 計算書類に関する公告
例:
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 連結計算書類の要旨
② 組織再編等に関する公告
例:
- 合併
- 会社分割
- 株式交換・株式移転
- 解散公告
これらは、債権者・株主・取引先の判断に重大な影響を及ぼすため、公告の真正性・継続性が特に強く求められます。
4 電子公告調査とは何か
(1) 調査の内容
電子公告調査とは、公告期間中を通じて、次の点が正しく確保されているかを確認する調査です。
- 公告事項が改変されていないか
- URLにアクセスすれば誰でも閲覧可能な状態か
- 公告期間中、中断なく掲載されているか
- 表示内容が会社の定めた公告内容と一致しているか
つまり、「掲載したつもり」では足りず、実際に社会から見て公告として機能しているかを確認する制度です。
(2) 調査実施者
電子公告調査は、原則として第三者が行います。具体的には、
- 指定調査機関(現在は有限会社等の民間機関が指定)
- 公認会計士・監査法人(一定の場合)
が実施します。
会社自身や役員が調査を行うことは原則として認められていません。
5 調査結果の保存義務
会社は、調査機関が作成した電子公告調査報告書を、
- 本店に備え置く
- 一定期間(通常5年間)保存する
義務があります。
この報告書は、
- 株主
- 債権者
- 裁判所
などからの閲覧・提出請求の対象となり得ます。
6 調査義務違反のリスク
電子公告調査を行わずに公告した場合、次のようなリスクがあります。
- 公告の無効・不備を主張される可能性
→ 債権者保護手続が無効とされるおそれ - 役員の善管注意義務違反
→ 取締役の責任問題に発展する可能性 - 登記手続での問題
→ 組織再編登記等で、公告の適法性が争点となることがある
特に、合併・解散等の公告では、電子公告調査の有無が実務上重要なチェックポイントとなります。

行政書士が会社法務に関与する場面では、
- 定款作成・変更時の公告方法の選択助言
- 電子公告を選択した場合の注意点説明
- 電子公告調査が必要な公告かどうかの整理
- 調査機関手配の段取り説明
といった形で、予防法務的な関与が可能です。
「電子公告=何でも簡単」ではなく、調査義務という法的コストがあります。
8 まとめ
一定の電子公告を行う会社には、
- 公告の真正性・継続性を確保するため
- 利害関係人保護の観点から
電子公告調査の実施と結果保存が法的義務として課されています。
電子公告は便利な制度である一方、調査義務を伴う制度設計であることを理解し、公告内容に応じた適切な対応を取ることが、会社および専門家双方に求められます。
会社設立運営に関するご相談お待ちしております。

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