飲食店開業で必要な手続きについて
飲食店を開業する事は、物件の確保や資金準備だけでなく、法令に基づいたさまざまな行政手続きが必要となります。特に飲食店は衛生や安全に直結する業種であるため、保健所の許可を中心に多くの届出を漏れなく行うことが求められます。以下では、飲食店開業の際に必要となる主な手続きについて、時系列に沿って分かりやすく説明いたしたく存じます。

1 事業計画の策定と物件選定
開業準備の第一歩は、事業計画の作成です。どのようなコンセプトの店舗を運営するのか、ターゲットとなる顧客層、提供するメニュー、必要な設備、初期投資額、運転資金、売上予測などを整理します。これにより、どのような立地が適しているか明確になるため、物件探しに大きく役立ちます。
飲食店は構造設備に関する基準があるため、物件は保健所の規格に適合できるスペースがあるかを確認する必要があります。給排水設備、厨房スペース、手洗い設備、トイレの配置などが要件を満たすか、事前に保健所へ図面を持参して相談することも可能です。
2 食品衛生責任者の資格取得
飲食店営業を行うためには、店舗ごとに食品衛生責任者を選任しなければなりません。調理師や栄養士などの資格を持っている場合は不要ですが、一般の方は都道府県の食品衛生協会が開催する「食品衛生責任者養成講習」を受講して資格を取得します。講習は1日で終了し、その場で修了証書が交付されます。
3 保健所への「飲食店営業許可申請」
飲食店を開業する上で最も重要なのが、保健所の営業許可です。許可がないまま営業すると食品衛生法違反となります。
(1)必要書類
一般的に以下の書類が必要です。
- 営業許可申請書
- 店舗の平面図(厨房・客席の配置図)
- 水質検査成績書(井戸水を使用する場合)
- 食品衛生責任者の資格証
- 施設の賃貸借契約書の写し
自治体によって様式が異なるため、事前に自治体のホームページで確認しておくと良いでしょう。
(2)施設の事前確認
申請前に、図面を持参して保健所へ相談に行くことが一般的です。特に厨房の広さ、シンクの数、給湯設備、手洗いの設置など、細かな基準があります。工事を始めてから基準に合わないと判明すると改修が必要になるため、事前確認は非常に重要です。
(3)施設検査
工事が完了したら、保健所の職員が現地で検査を行います。基準を満たしていれば営業許可証が交付され、晴れて営業が可能となります。
4 消防署への「防火管理者選任」と防火対象物使用開始届
飲食店は火を扱う業種のため、消防関係の届出も欠かせません。
■ 防火管理者の選任
収容人数が30人以上の飲食店は、防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者講習を受講することで資格が取得できます。
■ 防火対象物使用開始届
建物を使用する際には、管轄の消防署へ「防火対象物使用開始届」を提出します。厨房設備、消火器、火災報知器、防火設備などが消防法に適合しているか確認されます。
5 警察署への「深夜酒類提供飲食店営業届」(24時以降営業する場合)
バーや居酒屋などで 深夜0時以降に酒類提供を行う場合 は、風俗営業法に基づき警察署へ届出が必要です。図面作成に細かな基準があるため、行政書士がサポートするケースも多い手続きです。
6 税務署・自治体への各種届出
個人事業で飲食店を開業する場合は、税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出します。また、青色申告を行う場合は「青色申告承認申請書」も併せて提出すると節税に有利です。
従業員を雇う場合は、給与支払事務所の開設届や源泉所得税の納付関係の手続き、社会保険・労働保険の加入も必要となります。
7 その他の手続きと注意点
- 賃貸物件の場合、用途変更の確認:飲食店として使用できるか、ビルの管理会社やオーナーに事前確認が必要。
- ゴミの処理契約:事業系ゴミとして適切な回収業者との契約が必要。
- 看板の設置届:自治体によっては屋外広告物の届出が必要。
- 音楽使用の手続き:店内でBGMを流す場合、JASRAC等への申請が必要なケースがある。
まとめ
飲食店の開業には、保健所、消防署、税務署、警察署など、多岐にわたる行政手続きが伴います。特に保健所の営業許可は工事前からの準備が重要であり、スケジュール管理が開業日の成否を分けることもあります。行政書士はこれらの申請書類作成や図面作成、自治体との調整をサポートできますので、円滑な開業のためには専門家への相談が大いに役立ちます。
どうぞご連絡お待ちしております。

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