社債管理者と格付けについて

会社設立
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以下順を追ってご説明いたします

1 社債とは何か
社債とは、株式会社が資金調達のために発行する債券であり、投資家(社債権者)は会社に対して金銭債権を有します。銀行借入とは異なり、不特定多数の投資家から資金を集める点に特徴があります。
このように社債は多数の社債権者を前提とするため、個々の社債権者が発行会社を監視したり、権利を行使したりすることは現実的に困難です。そこで設けられているのが社債管理者制度です。
2 社債管理者の制度趣旨
社債管理者とは、社債権者のために社債の管理を行う者であり、会社法に基づき選任されます。
社債管理者制度の最大の目的は、情報力・交渉力で劣る社債権者を保護することにあります。
社債発行会社と投資家との間には、情報の非対称性があります。発行会社は自社の財務状況や経営リスクを把握していますが、社債権者は限られた情報しか得られません。そのギャップを埋める存在が社債管理者です。
3 社債管理者の法的根拠と選任
社債管理者に関する規定は、会社法第702条以下に定められています。
原則として、社債を発行する際には社債管理者を定めなければなりません。
社債管理者になれるのは、通常、銀行・信託銀行・証券会社などの金融機関です。これは、社債管理に高度な専門性と中立性、そして信用力が求められるためです。
ただし、一定の条件を満たす場合(私募債など)には、社債管理者の設置が不要とされることもあります。
4 社債管理者の主な役割
社債管理者の役割は多岐にわたりますが、主に以下の点が重要です。
(1)社債の管理・監督
社債管理者は、発行会社が社債条件を遵守しているかを監督します。たとえば、財務制限条項(コベナンツ)が定められている場合、その遵守状況を確認します。
(2)社債権者の代理
社債管理者は、社債権者を代表して発行会社に対する請求や交渉を行います。
会社が債務不履行(デフォルト)に陥った場合には、期限の利益喪失の通知や担保権の実行など、重要な法的手続を担います。
(3)情報提供
発行会社から得た情報を整理し、社債権者に対して適切に開示することも重要な役割です。
5 格付けとは何か
一方、**格付け(クレジット・レーティング)**とは、社債や発行体の信用力を第三者機関が評価し、記号で示す制度です。
日本では、R&I(格付投資情報センター)やJCR(日本格付研究所)などが代表的な格付機関です。
格付けは、発行会社が元利金を期日どおりに支払えるかどうか、すなわち信用リスクを評価したものです。
6 格付けの役割と意義
格付けの最大の意義は、投資家が社債を選択する際の判断材料を提供する点にあります。
社債は、預金と異なり元本保証がありません。そこで投資家は、
「この会社はどれほど信用できるのか」
「どの程度のリスクがあるのか」
を判断する必要があります。
格付けは、この信用リスクを一定の基準で可視化し、市場の共通言語として機能します。
7 社債管理者と格付けの関係
社債管理者と格付けは、いずれも社債権者保護を目的としますが、その役割は異なります。
格付け:投資判断の前提となる「事前評価」
社債管理者:発行後の「継続的管理・権利行使」
格付けはあくまで信用力の評価にすぎず、法的な拘束力はありません。一方、社債管理者は法律に基づく権限を有し、実際に社債権者のために行動します。
したがって、格付けが高くても、経営環境の急変などによりリスクが顕在化することはあり、その際に実務的な対応を担うのが社債管理者です。
8 まとめ
社債管理者と格付けは、いずれも社債市場の健全性を支える重要な制度です。
格付けが「情報の見える化」によって投資判断を支え、社債管理者が「権利の実現」によって社債権者を守る――この二つが相互に補完し合うことで、社債市場は成り立っています。

ご相談お待ちしています。



 

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