
- 1 遺留分が認められる相続人の範囲
- 2 事例への当てはめ(兄弟姉妹は請求できるか)
- 3 兄弟が取り得る手段はあるか
- 4 相続での遺言書作成上の注意
- 兄弟除外・配偶者+第三者遺贈型【自筆証書遺言・文案例】
- 作成上のポイント(重要)
- 付言事項(任意・紛争予防用)
- 公正証書遺言 文案(兄弟姉妹除外型)
- チェックポイント
- 公証役場提出時に聞かれる事項(想定)
- 前提整理(共通)
- ①「兄弟を除外するのは不公平・不自然だ」という主張
- ②「遺留分侵害だ」という主張
- ③「遺言能力がなかったのではないか」という主張
- ④「詐欺・強迫があった」という主張
- ⑤「遺言内容が不明確だ」という主張
- ⑥「生前に世話をしたからもらえるはず」という主張
- 対応フロー(紛争化前提)
- 最終整理(結論)
1 遺留分が認められる相続人の範囲
民法上,遺留分が認められているのは,次の者に限られます(民法1042条)。
- 配偶者
- 子(または代襲相続人)
- 直系尊属(父母・祖父母等)
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

2 事例への当てはめ(兄弟姉妹は請求できるか)
本人死亡
相続人:配偶者+兄弟1人
遺産を兄弟に行かず
配偶者+相続人以外の者へ遺贈
このケースでは,
- 配偶者:遺留分あり
- 兄弟:遺留分なし
となります。
したがって、
- 配偶者
→ 自身の遺留分が侵害されていれば,遺留分侵害額請求が可能 - 兄弟
→ 遺留分がないため,
遺留分侵害額請求(減殺請求)は一切できない
という結論になります。
3 兄弟が取り得る手段はあるか
原則として,
- 「兄弟に相続させない遺言」
- 「第三者への遺贈」
は完全に有効です。
兄弟が争える余地があるとすれば,
- 遺言の方式違反(自筆証書遺言の要件不備など)
- 遺言能力欠如(意思能力なし)
- 詐欺・強迫による遺言
といった遺言無効事由がある場合に限られます。
単に「取り分がない」「不公平だ」という理由では争えません。
4 相続での遺言書作成上の注意
- 兄弟が相続人に含まれるケースでは
遺留分対策は原則不要 - ただし配偶者の遺留分には注意が必要
- 紛争予防の観点からは
付言事項で理由を明示するのが有効
まとめ
| 相続人 | 遺留分侵害額請求 |
|---|---|
| 配偶者 | できる |
| 兄弟姉妹 | できない |
兄弟除外の遺言文案を作成する場合
兄弟姉妹を相続・遺贈から完全に除外することを明確にした遺言文案例
(※兄弟には遺留分がないため、この内容で法的に問題ありません)
兄弟除外・配偶者+第三者遺贈型【自筆証書遺言・文案例】
遺言者は、次のとおり遺言する。
第1条(相続分の指定)
遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち、
○分の○を配偶者 ○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条(遺贈)
遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち、
残余の財産を ○○○○(住所:○○○○)に遺贈する。
第3条(兄弟姉妹を相続人としない旨の明示)
遺言者は、
遺言者の兄弟姉妹およびその代襲相続人には、一切の財産を相続させない。
第4条(遺留分への配慮)
本遺言は、配偶者の遺留分を侵害しない範囲で効力を有するものとする。
第5条(遺言執行者の指定)
本遺言の執行者として、
○○○○(住所:○○○○)を指定する。
以上
令和○年○月○日
住所 ○○○○
遺言者 ○○○○ ㊞
(全文自書)
作成上のポイント(重要)
①「兄弟に相続させない」条文は必ず入れる
- 第3条のように明示的に除外しておくと、
後日の無用な争いを防止できます。
② 配偶者の遺留分条項は保険
- 兄弟には不要ですが、配偶者には必須
- 第4条を入れることで、遺留分侵害リスクを軽減
③ 遺言執行者はほぼ必須
- 兄弟が相続人に残るケースでは特に重要
- 行政書士・司法書士・弁護士指定が実務的
付言事項(任意・紛争予防用)
必要であれば、次のような付言事項を追加すると感情的紛争を抑えられます。
付言
遺言者が兄弟姉妹に財産を相続させないのは、
生前において十分な配慮を行ってきたこと、
および配偶者と受遺者の生活の安定を最優先に考えた結果である。
本遺言の趣旨を理解し、円満な解決を望む。
次に、
- 公正証書遺言版の完全文案例
兄弟姉妹を相続から完全に除外し,配偶者+第三者へ承継させる公正証書遺言の文案です。
公正証書遺言 文案(兄弟姉妹除外型)
遺言公正証書
本職は、遺言者 ○○○○ の嘱託により、次のとおり遺言の趣旨を記載し、これを公正証書として作成する。
第1条(相続分の指定)
遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち、
○分の○を、遺言者の配偶者 ○○○○(昭和○年○月○日生)に相続させる。
第2条(遺贈)
遺言者は、遺言者の有する一切の財産のうち、
前条記載の残余の財産を、○○○○(住所:○○○○)に遺贈する。
第3条(兄弟姉妹を相続させない旨の明示)
遺言者は、
遺言者の兄弟姉妹およびその代襲相続人には、一切の財産を相続させない。
第4条(遺留分への配慮)
本遺言は、配偶者の遺留分を侵害しない範囲で効力を有するものとする。
第5条(遺言執行者の指定)
遺言者は、本遺言の執行者として、
○○○○(住所:○○○○)を指定する。
第6条(執行者の権限)
遺言執行者は、次の権限を有するものとする。
1.遺言の内容を実現するために必要な一切の行為
2.相続財産の管理・引渡し
3.預貯金の解約および払戻請求
4.不動産の名義変更手続
5.遺産分割協議を要しない単独執行
付言事項(任意)
遺言者が兄弟姉妹に財産を相続させないのは、
生前において十分な配慮を行ってきたこと、
ならびに配偶者および受遺者の生活の安定を最優先に考えた結果である。
本遺言の趣旨を理解し、円満な解決を望む。
公証人記載部分(定型)
本遺言は、令和○年○月○日、
○○公証役場において、
遺言者 ○○○○ の陳述の趣旨に従い本職がこれを筆記し、
遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させたところ、
その内容が正確であることを承認したので、
遺言者および証人2名とともに署名押印する。
チェックポイント
① 兄弟除外は「明示条文」が必須
- 第3条がないと「書いてないだけ」と争われやすい
- 公正証書でも明確化は重要
② 遺留分条項は形式的でも必ず入れる
- 配偶者対策
- 遺留分侵害額請求を抑止
③ 遺言執行者は第三者指定が安全
- 兄弟が相続人に残るため
- 実務上は士業指定が最も安定
公証役場提出時に聞かれる事項(想定)
- 推定相続人の構成(配偶者・兄弟)
- 兄弟を除外する理由(簡潔で可)
- 財産目録(概算で可)
- 証人2名(公証役場紹介可)
必要であれば次に、
- 兄弟から無効主張が出た場合の反論整理を以下に述べます。
兄弟姉妹からの想定主張と反論整理
前提整理(共通)
- 相続人構成:配偶者+兄弟姉妹
- 遺言形態:公正証書遺言
- 兄弟姉妹:遺留分なし(民法1042条)
→ 分与を求める法的権利は原則として存在しない
①「兄弟を除外するのは不公平・不自然だ」という主張
相手の典型主張
- 家族なのに一切もらえないのはおかしい
- 生前の意思とは思えない
反論の要点
- 相続は「公平」ではなく被相続人の意思が最優先
- 兄弟姉妹には遺留分が法定されていない
- 不公平感は法律上の無効理由にならない
反論文例(対外説明用)
本件遺言は、被相続人の自由意思に基づくものであり、
兄弟姉妹に遺留分が認められていないことから、
分与をしないこと自体は民法上当然に許容されます。
②「遺留分侵害だ」という主張
相手の典型主張
- 兄弟にも最低限の取り分があるはず
- 全部他人にやるのは違法
反論の要点
- 兄弟姉妹に遺留分は存在しない
- 民法1042条に明確
反論文例
民法第1042条は、遺留分権利者を
配偶者、子および直系尊属に限定しており、
兄弟姉妹は遺留分権利者ではありません。
③「遺言能力がなかったのではないか」という主張
相手の典型主張
- 高齢だった
- 判断能力が落ちていた
- 誰かに操られた
反論の要点(公正証書遺言の強み)
- 公証人が本人確認・意思確認を実施
- 証人2名立会い
- 遺言能力がなければ公証人が作成拒否
反論文例
本遺言は公正証書遺言であり、
作成時に公証人が遺言者本人と面談し、
遺言能力および意思の真意を確認したうえで作成されています。
単なる高齢や憶測のみでは、遺言無効は認められません。
④「詐欺・強迫があった」という主張
相手の典型主張
- 配偶者や第三者が言いくるめた
- 脅されていた可能性がある
反論の要点
- 詐欺・強迫の立証責任は主張者側
- 客観証拠が不可欠
- 公正証書遺言では極めてハードルが高い
反論文例
詐欺または強迫の存在は、
主張する側に具体的かつ客観的な立証責任があります。
本件では、そのような事実を裏付ける証拠は一切存在しません。
⑤「遺言内容が不明確だ」という主張
相手の典型主張
- 曖昧な表現
- 解釈が分かれる
反論の要点
- 公正証書遺言は法律専門家による文言整理
- 「兄弟に相続させない」条文が明示されている
反論文例
本遺言は、公証人が関与して作成されたものであり、
兄弟姉妹を相続人としない旨も明確に記載されています。
解釈の余地はありません。
⑥「生前に世話をしたからもらえるはず」という主張
相手の典型主張
- 介護した
- 面倒を見た
反論の要点
- 相続分とは無関係
- 寄与分は「相続人のみ」が対象
- 兄弟でも寄与分請求不可
反論文例
寄与分制度は、相続人に限定される制度であり、
相続人でない兄弟姉妹には適用されません。
対応フロー(紛争化前提)
- 内容証明で一括反論
- 遺言公正証書写し提示
- 民法条文明示
- 交渉打切ライン明確化
- 調停移行なら弁護士連携
最終整理(結論)
- 兄弟姉妹の主張は感情論に終始しやすい
- 法的反論は極めて安定
- 公正証書遺言+明示除外条文がある以上、
兄弟が勝てる余地はほぼない
相続や遺言作成でお悩みは個々様々発生します。一人で悩まずにご相談くださいね。

↓
「行政書士辻澤孝文事務所」ホームページ


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