1 前提:親族相盗例とは
まず条文構造を確認します。

■ 刑法244条(親族相盗例)
- 配偶者・直系血族・同居親族間の窃盗等
→ 刑の免除 - その他の親族間
→ 告訴がなければ公訴提起不可
対象犯罪:
- 窃盗
- 詐欺
- 横領 等
👉 趣旨
= 家庭内紛争への国家刑罰権の過度介入を避ける。
つまり
「家族内トラブルは原則民事で処理」
という政策的規定です。
2 問題の所在(成年後見人の場合)
成年後見では次の状況が生じます。
例:
- 子が成年後見人に選任される
- 被後見人(親)の預金を私的流用
- 業務上横領成立
ここで問題。
👉
親子関係がある以上、親族相盗例は適用されるのか?
3 結論:最高裁は適用を否定
◆ 最高裁平成24年10月9日判決
(成年後見人による被後見人財産横領事件)
【結論】
✅ 親族相盗例の適用を否定
つまり:
親族であっても刑の免除はされない。
4 最高裁の判断構造(重要)
最高裁は単に「親族だから除外」とは言っていません。
論理は次の3段階です。
① 成年後見人の地位は「公的性格」を持つ
成年後見人は:
- 家庭裁判所が選任
- 監督を受ける
- 法律上の職務として財産管理
つまり
👉 私人としての親族ではない
と評価。
② 後見関係は「信任関係」ではなく「制度的関係」
親族相盗例の前提は:
- 家庭内部の信頼関係
- 親族共同体
しかし成年後見では
- 判断能力喪失者保護
- 社会的弱者保護制度
であり、
家族的信頼ではなく
法制度による保護関係
と整理された。
③ 被後見人保護が最優先
最高裁の核心。
成年後見制度の目的:
- 財産保護
- 権利擁護
- 搾取防止
もし親族相盗例を適用すると:
- 親族後見人の横領が事実上処罰困難
- 制度趣旨が崩壊
よって
👉 親族相盗例の趣旨が及ばない
と判断。
5 判例の基本
この判例は非常に影響が大きいです。
✔ 原則
| 地位 | 親族相盗例 |
|---|---|
| 単なる親族 | 適用あり |
| 成年後見人 | ❌適用なし |
✔ ポイント
よく使われる整理:
成年後見人は親族であっても、
家庭裁判所により選任された公的職務主体であり、
家庭内関係を前提とする親族相盗例の基礎を欠く。
6 なぜ重要か
極めて重要です。
■ 親族後見のリスク
現場では:
- 子後見人
- 配偶者後見人
が多数。
しかし本判例以降、
✅ 横領=普通に刑事責任
になります。
■ 結論
- 親族でも刑事責任免除なし
- 業務上横領成立可能
- 家裁監督下の公的職務
7 理解を一段深める(本質)
この判例は実は次の転換点です。
昔
「家族だから刑罰は控える」
↓
現在
「弱者保護制度では家族でも厳格責任」
つまり
👉 家族<制度的保護
という価値判断。
8 まとめ(要約)
- 親族相盗例は家庭内紛争回避規定
- 成年後見人は家庭裁判所選任の公的地位
- 被後見人保護が優先
- よって最高裁は適用否定
相続や成年後見制度などご相談ください。
↓
「行政書士辻澤孝文事務所」ホームページ

コメント